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Q:消防や日赤で行われている救命の講習会と
  AHAのBLSヘルスケアプロバイダーコースと何が違うの?

A:
『違い』より『共通の目的』の方が大事なので、初めにこのことをご理解下さい。
心肺停止状態になってから適切な一次救命処置をしないと、蘇生率は毎分10%ぐらいずつ下がります。日本では救急車の現場到着時間は平均7分ぐらいであり、7分もたつと蘇生率は30%を下回ります。救急車が来てからでは遅いのです。身近にいる人による一次救命処置が非常に重要です。その意味において、消防や日赤やNPO団体などが一般市民の方向けの講習会を開催され、一次救命処置を広めておられることは、大変に意義のある、非常に重要なことだと考えられます。 AHAは、PAD(Public Access Defibrillation:市民による除細動)プログラムの導入を1995年から勧告しています。

以上の点を踏まえた上でご説明いたします。
心肺蘇生の国際ガイドラインでは、一次救命の救助者を"市民救助者(Lay Rescuers)"と"ヘルスケアプロバイダー(Healthcare Providers)"の2種類に分類し、それぞれに応じた心肺蘇生の手技を勧告しています。

区分 定義 ガイドライン勧告の手技 講習会 利点・欠点など
市民救助者 ・一般市民の方
・ごくまれにしか蘇生に
 関わらない医療従事者
・手技の容易さを優先
・簡単なものにして
 広く普及するよう
消防
日赤
NPO
(AHA)
・ほとんどが無料
・実演式が多い
・乳児等の実習が少ない
ヘルスケアプロバイダー ・日常的に蘇生に関わる
 医療従事者
・職務中、蘇生処置を
 行わねばならない
 責務がある方 
・より高い蘇生率を優先
・蘇生の上級者
・手技は市民より複雑
AHA ・AHAは詳細なビデオ作成
・ビデオを見ながら実習
・乳児〜成人まで機材準備
・機材費等は受講者負担

手技の違い
ガイドラインで勧告されたそれぞれの手技については、両者の相違点はかなりあるので、
以下2つの例のみ紹介します。
例1:
市民救助者に対しては、指導内容を単純化することを優先して、一人でおこなう心肺蘇生のみを勧告しています。
ヘルスケアプロバイダーに対しては、二人法も勧告しており、実際のAHAのBLSヘルスケアプロバイダーコースでは、一人法、二人法共、両方実習します。

例2:
小児が倒れた(或は倒れている)現場に救助者が一人しかいないような場合、
市民救助者の場合は、CPRを5サイクル行って、119番通報、AEDを持ってくることになっています。
ヘルスケアプロバイダの場合、小児が目の前で突然バタンと倒れた場合、『心臓が原因で倒れた』と見なし、『心原性の場合はまず電気ショックが必要』と判断し、先に119番通報し、AEDを持ってきて、処置します。また、発見したとき既に倒れていた場合は、『小児の心停止の多くは呼吸障害が原因』であることから、『呼吸原性』と見なして、先にCPRを5サイクルして、そのあと現場をはなれて119番通報し、AEDを持って戻ってきます。
以上のように、ヘルスケアプロバイダーに勧告された手技は、市民より難しいものになっています。

講習会の違い
市民救助者向けの講習会では、インストラクターがデモンストレーションをして、それを見て受講生が実習する形が多いです。また、大変な努力をされて独自にビデオを作られている団体もあります。

AHAは「健康管理に関する最大のボランティア団体」ですが、ヘルスケアプロバイダーコースをはじめ他のコースとも、ビデオ教材に力を入れ、巨費を投じてわかりやすいビデオを作製しています。これにより、専門性のある知識と手技の習得を確実にし、また、各地のインストラクターによる手技のばらつきをなくし、世界各地での手技レベルの統一を図っています。AHAの発行するカードが国際的に通用するインターナショナルカードとされるのはこのためです。
また、例えば10〜20人の受講生に対してマネキン1体で説明するようだと、肝心の手技が身に付かないため、実際のコースでは、一人一人が確実に実習できるよう必要な機材をきちんと準備しています。乳児から成人まで全年齢にわたって実習できるようにしています。また、衛生面での対策や保険加入などに関してもマニュアル(PAM)に従って実行されています。 これら機材等コースにかかる費用は、受講生にご負担していただいております。






Q:AHA(アメリカ心臓教会)はどのような組織でECCの訓練を行っていますか?
  またAHA岡山BLSはどのトレーニングセンターに属していますか?

A:
AHAのトレーニングセンターは世界に約3500あります。また、一つのトレーニングセンターは、複数のトレーニングサイトをもっている場合があります。AHAは年間2000万人のECCプロバイダーの訓練を目標にしています。

アメリカ国内(AHA)
アメリカ国内にあるトレーニングセンターはAHAが管轄しています。アメリカで資格を取ったインストラクターは、「AHAのインストラクター」であり、全世界で教えることができます。(USインストラクターグループと称されることもあります)
つまりUSインストラクターは、アメリカのトレーニングセンターに属し、日本でAHAのコースをすることもできます。
(日本で初めてAHAのコースが開催されたのはこの形でした。)
アメリカには多くのトレーニングセンターがありますが、現在日本でコース開催している主力のトレーニングセンターは、
(1)AMR(American Medical Response)トレーニングセンター
です。
AHAのトレーニングセンターが発行した認定カードは、「AHAのカード」です。
AMRのカードは、アメリカで発行されますので、アメリカで取得するのと同じです。

日本(ITC)
またAHAから見て、国外組織であるトレーニングセンターは、ITO(International Training Center)とか
ITC(International Training Center)と呼ばれます。
ITCで資格を取ったインストラクターは「ITCのインストラクター」であり、その国で教えることができます。
日本には、4つのITCのトレーニングセンターがあります。
(2)日本蘇生協議会 JRC-TC
(3)日本ACLS協会 JAA-TC
(4)日本小児集中治療研究会 JSPICC PALS-ITC
(5)日本循環器学界 JCS-ITC
ITCの発行した認定カードは「ITCのカード」です。

結論
つまり、日本でECCのコースをしている団体・グループは、合計5つあります。
(1)はAHAのインストラクターが教えているAHAのトレーニングセンターであり
(2)〜(5)は、ITCのインストラクターが教えているITCのトレーニングセンターです。
AHA岡山BLSは、(1)と(2)に属しています。

これは教える側から見た違いです。受講生から見た場合の違いはありません。
AHAは「AHAのカード」と「ITCのカード」の互換性を認めています。



Q:他のトレーニングセンターでBLSを受講した後、AMRやJRCのACLSコースを受講できますか?
  また逆に、AMRやJRCでBLSを受講した後、別のトレーニングセンターのACLSコースを受講できますか?

A:
ACLSコース受講の条件は、プロフェッショナルなBLS-HCPのスキルができることです。その意味でBLSカードはスキルができることを客観的に示してくれる証左となります。
AHAはAHAのカードとITCのカードの互換性を保証していますので、AHAのルールに則っていれば、どのトレーニングセンターのものであれ、期間内のBLSカードを提示することができれば、ACLSコースを受講する資格は厳然とあります。

事実、AMRやJRCのACLSコースでは、AHAのルールに則り、例えばACLS協会でBLSを取られた方でも受け入れています。また、逆にAMRやJRCでBLSを受講した後に、他のトレーニングセンターのACLSコースを申し込んで、受講を断られたケースはこれまでないようです。
(他のトレーニングセンターでのACLSコース受講の条件に「BLS-HCP資格が必要」という表記はありますが、 「自分のトレーニングセンターのBLS-HCP資格が必要」という条件は見当たりません。)



update 2008.02.12
since  2007.12.24

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