岡山BLS両手だけのCPR
NEW 08/03/31AHAの重要な勧告がでました。Hands-Only CPR (両手だけのCPR) 4/12以降の講習会で対応済です。

両手だけのCPR(Hands-Only CPR)

1.はじめに
2007年、長尾先生らSOS-KANTOグループの研究結果が発表されました。病院の外において、人工呼吸を省略した胸骨圧迫のみのCPR(心肺蘇生法)は、人工呼吸を伴う従来のCPRと同様に有効であるとの趣旨です。この論文と他の同様の趣旨を含む計3つの論文(Nagao et.al,2007,Borm et.al,2007,Iwami et al.,2007)の研究成果に基づいて、AHA(American Heart Associationアメリカ心臓協会)は、2008年3月31日、一般の方向けに、重要な勧告を発表しました。


2.勧告の内容
これまでCPRを訓練を受けていない方、または受けたけれども手技に自信のない方に対して、AHAは、人工呼吸を省略した胸骨圧迫だけのCPRをするよう勧告しています。この「両手だけのCPR」は、病院の外において、成人が目の前で突然倒れるのを発見した場合に行います。両手だけのCPRは、胸の中心を両手で強く早く押すだけの手技であり、非常に簡単であるため、一般の方でも簡単にCPRをすることができます。本勧告によって、バイスタンダーの事例が増え、これまでにない救命率の向上が期待されます。どんなタイプのCPRでも何もしないよりは助かる可能性は増えます。市民の皆さん、勇気をもって行動を!

条件 (1)成人
(2)目の前で突然倒れた場合
(3)病院の外
・上記以外の条件では、これまで通り人工呼吸を伴う30:2のCPRです。
 例えば成人が既に倒れていた場合は30:2です。
やること (1)119番通報
(2)両手だけのCPR
・この勧告には反応の確認・呼吸の確認はありません。
 (勧告になくても、人間の自然の行為として反応の確認はするのではないかと考えられます)
・通報はありますが、AEDの依頼もありません。
・胸の中心を両手で強く早く押します。人工呼吸はしません。

 

3.本勧告の適用の範囲
「両手だけのCPR」の勧告は、市民救助者に適用されます。市民救助者でも、これまで30:2の訓練を受け、最小の中断時間で人工呼吸ができ、質の高い胸骨圧迫が出来る方は、これまで通り30:2のCPRです。ヘルスケアプロバイダーへの勧告は従来と変更はありません。

  救助者
市民救助者 ヘルスケアプロバイダー
右記以外の方 30:2の訓練を受け
手技に自信のある方
傷病者 成人
Adult
突然倒れた場合 両手だけのCPR
Hands-Only CPR
30:2 30:2
既に倒れていた   30:2 30:2
小児   30:2 30:2
乳児     30:2




4.突然倒れた成人に対処する「両手だけのCPR」(Hands-Only CPR)  よくある質問に対する答え

突然倒れた成人に対処する「両手だけのCPR」(心肺蘇生法) (Hands-Only CPR)
よくある質問に対する答え

原典:http://handsonlycpr.eisenberginc.com/faqs.html
   Hands-Only CPR Frequently Asked Questions (FAQ) for Instructors
翻訳:日本救命協会 translated by JEMTA 2008.4.10 ,4.16

                        アメリカ心臓協会・アメリカ心臓協会脳卒中部門


   突然倒れた成人に対処する「両手だけのCPR」(心肺蘇生法) 
   (Hands-Only CPR)

   よくある質問に対する答え


                  概説

Q1:「両手だけのCPR」とは何ですか?

A:両手だけのCPRとは、口対口人工呼吸を省略したCPRのことです。この手技は院外において成人が突然倒れるのを発見した人が使用すべきです。それは二つのステップからなります。

     1.119番通報する(または誰かに通報させる)
     2.最小の中断時間で胸の中心を強く早く押すことによって質の高い胸骨圧迫を始める。


Q2:誰が「両手だけのCPR」を受けるべきですか?

A:「両手だけのCPR」は突然倒れた成人に使用することが推奨されます。アメリカ心臓協会(AHA)は、全ての乳児・小児と既に意識のない状態で発見された成人、および溺水したり呼吸系のトラブルで倒れたすべての患者に対しては従来のCPR(人工呼吸と圧迫の組み合わせ)を推奨しています。


Q3:「両手だけのCPR」をどのようにするのかを学ぶために、トレーニングコースを受講する必要がありますか?

A:CPRは精神運動スキルです。AHAは質の高い胸骨圧迫をするためにCPRのスキルを練習し学ぶために、CPRのコースを受講されるよう推奨いたします。CPRのトレーニングを受けた人は、受けなかった人または過去5年間受けなかった人より、より自信をもって質の高い胸骨圧迫ができる可能性が高いです。 *自宅で学べるAHAの22分間の「CPR Anytime」のようなとても短い訓練プログラムを受けた人ですら、質の高い胸骨圧迫のスキルを提供できます。

*スキル実行のデータは、比較のための訓練されていないグループを使った2005CPR Anytimeからのものです。正確性と実行の意欲は2007年の全国調査からのものです。過去5年間の間に訓練を受けたアメリカ人は、過去5年間に訓練を受けていないアメリカ人に比べて、これは約2倍ありました。(45%VS24%)


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Q4:私はまだ人工呼吸を伴った従来のCPRを学ぶ必要がありますか?

A:AHAは依然として人工呼吸を伴った従来からのCPRを学ぶことを推奨しています。医学的な緊急事態はたくさんあり、これらは人を意識のない状態にしたり、通常の呼吸を止めたりします。これらの危機的な状況において、人工呼吸を伴うCPRは「両手だけのCPR」よりもメリットがあります。例えば以下のような場合です。
 ・反応のない乳児や小児
 ・既に意識のない、通常の呼吸をしていない成人の患者
 ・溺れたり、呼吸のトラブルによって倒れた患者


Q5:「両手だけのCPR」は従来のCPRと同じように効果的なのですか?

A:通りすがりの人によってなされた「両手だけのCPR」は、院外での突然の心停止に関して、最初の数分間は従来のCPR(人工呼吸を含む)と同じ効果があるとされます。従来のCPRを提供することは、乳児や小児、心停止で発見された成人や、溺れた人や呼吸系のトラブルで倒れた人のような傷病者に対しては「両手だけのCPR」よりベターです。何もしないより、どんなCPRでもやった方がベターです。

Q6:「両手だけのCPR」によって、心臓の緊急状態のときに、バイスタンダーが行動を起すチャンスが増えますか?

A:はい。全国調査によると、過去5年間CPRの訓練を受けていないアメリカ人は、突然倒れた成人に対し、従来のCPRよりも「両手だけのCPR」のほうがしやすいとの結果がでています。 加えて、「両手だけのCPR」は以前CPRを習ったバイスタンダーにとって、記憶しやすい効果的なオプションです。なぜなら彼らにとって、従来のCPRの手順を記憶したり実行したりするのは難しいからです。


Q7:どのようにして「両手だけのCPR」という名称を決めたのですか?

A:「両手だけのCPR」という用語は、幅広い協議により、コミュニケーションと蘇生の専門家によって、また焦点を定めたグループと国家的な調査によって決められました。この第一の目的は、一般の方が覚えやすかったり、また成人が突然倒れた時に助けることができる効果的な技法を表現するメッセージを創ることでした。この包括的な目標は、もちろんバイスタンダーを勇気付け、成人が突然倒れるのを発見した時にすぐさま適切な行動を起せるようにして、救命率をあげることです。


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     いつ&どのように「両手だけのCPR」を行うのか


Q8a:もし私が人工呼吸を含む従来のCPR(30回の胸骨圧迫と2回の人工呼吸、または30:2のCPR)で訓練を受けていて、成人が突然倒れるのを発見したらどうしたらよいですか?
又は
Q8b:もし私がAHAのハートセイバーコースでCPRの訓練を受けていて、成人が突然倒れるのを発見した場合、何をしたらいいですか?

A:119番通報をしてCPRを始めて下さい。

もしあなたが質の高い胸骨圧迫を行い最小の中断時間で人工呼吸を行う自信があるのであれば、あなたが習った従来のCPR(30:2の圧迫呼吸の比率)をするか、もしくは「両手だけのCPR」をして下さい。AEDが到着するかEMSプロバイダーと役割を交代する準備ができるまでCPRを続けて下さい。

もしあなたが質の高い胸骨圧迫をともに最小の中断時間で人工呼吸を行う自信がなければ、「両手だけのCPR」をして下さい。両手だけのCPRを、AEDが到着するかEMSプロバーと役割を交代する準備ができるまで続けて下さい。


Q9:もし私が人工呼吸を含む従来のCPR(30回の胸骨圧迫と2回の人工呼吸、または30:2のCPR)の訓練を受けていた場合、従来のCPRに切替えるまでにどのくらいの時間「両手だけのCPR」ができるんですか?

A:この点について、特定の推奨ができる十分なデータがありません。訓練された救助者は患者のそばに着いたら引き継ぎます。これらの救助者は地元のプロトコルに従います。そのプロトコルは、ほとんどの場合、従来のCPR(言い換えれば人工呼吸を伴うCPR)であり、また特別の機材を使います。その合間、あなたは質の高い、最小の中断時間での胸骨圧迫をするべきです。もしあなたが最小の中断時間で人工呼吸をしながら胸骨圧迫ができるのなら、従来のCPRをするか、もしくは「両手だけのCPR」をするべきです。


Q10:もしAEDが人工呼吸を含むCPRをするようにガイダンスした場合、私は胸骨圧迫をすべきですか?

A:AEDの指示に従い、胸骨圧迫の中断時間を最小にするようにして下さい。思い出して下さい。全ての心停止の傷病者は質の高い胸骨圧迫を受けるべきです。あなたは最小の中断時間で、胸の中心を強く早く押してください。


Q11:私はヘルスケアプロバイダーです。私が仕事中に成人の心停止の傷病者に出くわした場合、どんな種類のCPRをしたらよいですか?

A:今回アメリカ心臓協会はヘルスケアプロバイダーとしての一次救命の訓練を受けたヘルスケアプロバイダーと他のプロの救助者に対しての勧告を変えてはいません。意識にない患者に対応するあなたの地域のプロトコルに従って下さい。それは直ちに助けを呼ぶこととAEDを持ってくるように依頼することを含みます。そして、もしあなた一人ならば、(訳注:通報・AEDの依頼をした後に)訓練されたようにCPRを始めて下さい。最小の中断で質の高い胸骨圧迫をして下さい。


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Q12:私はヘルスケアプロバイダーです。もし私が仕事中ではないときに成人の心停止に出くわしたとき、どのタイプのCPRをすべきですか?

A:今回、アメリカ心臓協会は、ヘルスケアプロバイダーとしての一次救命の訓練を受けたヘルスケアプロバイダーと他のプロの救助者に対しての勧告を変えてはいません。あなたの知っていること、すべきと思うことをして下さい。院外での成人の心停止においては、最初の数分間は、どちらのタイプのCPRも効果的であることは示されています。あなたはあなたが自信をもってできる最小の中断時間で質の高い胸骨圧迫の方法を実行するべきです。

[もっと詳しく]すべての心停止の傷病者は、胸の位置が完全に元にもどる、強くて早い胸骨圧迫を受けるべきです。そのテンポは1分間に100回で、最小の中断時間で行われなければなりません。もしあなたが院外で成人が突然倒れるのを発見した場合、人工呼吸を伴う従来のCPRを最小の中断時間で実行できる自信があれは、あなたは従来の30:2のCPRをするか、或は両手だけのCPRのどちらかをすることができます。


Q13:もし助けが来る前に、私が疲労困憊(こんぱい)してしまったなら、私は何をすべきですか?

A:あなたの能力の限りを尽くして、最小の中断で、強くて早い胸骨圧迫をして下さい。私たちは1分間に100回の質の高い胸骨圧迫をすることは本当に大変であることはわかっています。ほとんどの方はどんなタイプのCPRにしろ、数分間やっただけで疲れてしまいます。もし誰かが近くにいれば、2分間か、約200回の胸骨圧迫の後に、その方に代わってもらって下さい。もしあなた一人なら、ベストをつくすしかありません。


Q14:突然倒れた人のすべてが心停止とは限らないと思います。CPRは傷病者を傷つけるのではないでしょうか?

A:突然倒れた成人で反応のない場合は突然の心停止であり、もし誰かがすぐにアクションをおこさないと生存の可能性はゼロに近づいてしまいます。あなたは119番通報をして、最小の中断で胸の真ん中を強く早く圧迫し始めなければなりません。もし、突然の心停止により倒れた場合、両手だけのCPRは、どんなバイスタンダーにも簡単で、その傷病者の蘇生率が倍以上になる効果的な方法です。もし成人が突然の心停止以外の理由で倒れた場合に両手だけのCPRをすれば、傷病者は動き出したり、通常の呼吸をしたり、話したりして反応するでしょう。もしそのようであれば、両手だけのCPRは止めることができます。そうでなければ、救急隊が到着するまで胸骨圧迫は続けるべきです。


Q15:CPRをしている最中に肋骨を折るようなことはありませんか?

A:はいあります。2004年の文献*1によると、従来のCPRにおいて少なくとも1/3のケースで、肋骨および、あるいは、胸骨を折っています。CPRによってそのようなケガをした人に関する関連の研究*2によると、この骨折によって、内出血や死亡に至るケースはありません。しかし一方で、すぐに最小の中断で質の高い胸骨圧迫や、つづく数分以内の処置(救急隊からの除細動ショックや高度なケア)を、受けていない院外での心停止の傷病者の生存率はほとんどゼロになります。
*1 Hoke RS, Chamberlain D. (2004). Skeletal chest injuries secondary to cardiopulmonary resuscitation. Resuscitation. 63(3):327-38.
*2 Lederer W, Mair D, Rabl W, Baubin M. (2004). Frequency of rib and sternum fractures associated with out-of-hospital cardiopulmonary resuscitation is underestimated by conventional chest X-ray. Resuscitation. 60(2):157-62.


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Q16:もし、誰も倒れるところを見ていないを成人を発見した場合、何をすべきですか?

A:119番通報をしてCPRを始めて下さい。もしあなたが従来のCPR(人工呼吸を伴ったCPR)を習っていたら、119番通報をして、あなたが習った通りのCPRをして下さい。もしあなたが両手だけのCPRしか知らなかったら、119番通報をして、AEDが到着して使えるようになるまで、或は、救急隊に傷病者を引き継ぐまで両手だけのCPRをして下さい。


Q17:訓練を受けることなく、いきなりCPRをしても危険はありませんか?

A:通常、助けないで何もしないよりも、どんなやり方であれCPRをした方がベターです。


Q18:仕事の一環として緊急事態に応じる責務のある市民救助者や、ハートセイバーCPR、AED,、ファーストエイドの訓練を受けている人は、どのタイプのCPRをすべきですか?

A:これらの救助者の方が、成人が突然倒れるのを目撃した場合は、両手だけのCPRか従来のCPRのどちらでも結構です。AHAはこれらの傷病者を発見したら:

119番通報してCPRを始めるよう推奨しています。

もし救助者が能力的に人工呼吸を伴い最小の中断で質の高い胸骨圧迫ができる自信があれば、救助者が習った従来のCPR(30:2の胸骨圧迫と換気の割合)をするか、或は両手だけのCPRをして下さい。AEDが届いて使えるようになるまで、もしくは救急隊に傷病者を引き継ぐまでCPRを続けて下さい。

もし救助者が能力的に人工呼吸を伴い最小の中断で質の高い胸骨圧迫ができる自信がなければ、両手だけのCPRをして下さい。そして、AEDが届いて使えるようになるまで、もしくは救急隊に傷病者を引き継ぐまでCPRを続けて下さい。

アメリカ心臓協会は、すべての乳児・小児、および既に意識がなく通常の呼吸をしていない状態で発見された成人と、溺水や呼吸系のトラブルで倒れた傷病者に対しては、従来のCPR(人工呼吸と胸骨圧迫の組み合わせのCPR)を推奨しています。


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Q19:仕事として緊急事態に応じる責務のある市民救助者が、例えばオフィス環境のように成人の突然の心停止のみに出くわす可能性が高い場合において、従来のようなCPRやAED使用ができるように救助者を訓練したり雇用したりする意味がありますか?

A:どんなタイプのCPRであれ質の高い胸骨圧迫をすることは精神運動スキルであることにかわりはありませんが、実際にCPRトレーニングプログラムにおいて練習することがベストの方法です。事実、CPRのトレーニングを受けたかたは、訓練を受けていないまたは過去5年間訓練を受けていない方に比べて、質の高いCPRができ、自分のスキルに対してより自信を持つ可能性が高いです。*

従来のCPRのトレーニングは依然として重要です。なぜなら成人の突然の心停止以外にも医学的な緊急事態に応じることができるからです。緊急事態はほとんどどこにでも発生します。窒息や薬物中毒やアレルギー反応などオフィスにおいてもそうです。

*スキルのデータは、比較のための訓練されていないグループを使った2005CPR Anytimeからです。自信と意欲に関するデータは2007年の全国調査からです。過去5年間の間に訓練を受けたアメリカ人の場合、訓練を一度も受けていないか過去5年間の間に受けていない人に比べて、約2倍のかたが、実際の緊急事態の時にすぐにCPRを開始すると答えたそうです。(45% VS 24%)


     科学とガイドラインの情報


Q20:何故心停止の後で突然倒れた成人に対して、最初の数分間は口対口人工呼吸が必要ないのでしょうか?

A:成人が心停止で突然倒れた時点では、肺と血液には十分な酸素を含んでおり、誰かが最小の中断時間で質の高い胸骨圧迫をして心臓と脳に血液を循環させる限り、最初の数分間は重要な器官の生命維持を保つことができます。

[詳細について]
・成人が心停止で突然倒れた場合、その原因は通常、不整脈が突然始まったからです。もっとも一般的な不整脈では突然の心停止を引き起こします。それは心室細動(VF)です。VFは心臓を震えさせ、血液を送り出せなくなります。突然倒れる前に、成人はたぶん通常の呼吸をしていたはずです。突然倒れたときに呼吸が止まっていたとしても、最初の数分間は、成人の肺と血液は、新鮮な酸素の供給ができるはずです。

・あなたがプールで水の中にもぐってじっとして息を止めているシーンをイメージしてみてください。ほとんどの人は、動かない限りは、かなりの長い間、息を止めることができます。

・倒れてから最初の数分間、人工呼吸が必要ではないもう一つの理由は、心停止の人には、心停止でない人より少ない量の酸素で事足りるからです。

・このような理由によって、バイスタンダーにとって、最も重要なことは突然の心停止の傷病者の脳と心筋に血液を循環させることです。それは肺と血液にまだ残っている酸素を循環させることです。救助者は最小の中断で質の高いCPRをすることによってこれができます。胸骨圧迫の中断をして、口対口人工呼吸をすることは、肺に対して一定の酸素の供給がなされると思います。しかし、数秒以上中断して脳と心筋に血液を送るのを止めると、その供給された酸素による効果はプラスマイナス・ゼロになります。(特に突然の心停止の後、最初の数分は酸素は、肺や血液中にまだ十分に残っていますので。)


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Q21:アメリカ心臓協会がそのCPRの勧告を変えたのは何故ですか?

A:今回の勧告は2005年の「アメリカ心臓協会の心肺蘇生と救急心血管治療のガイドライン」で明快に述べられています。このガイドラインではバイスタンダーCPRの普及と質の向上が必要である旨述べられています。ガイドラインはまた、人工呼吸をしたくないとか、また、できない市民救助者は、両手だけのCPRをするように勧告しています。(このガイドラインの中では「胸骨圧迫のみのCPR」と表現されています) 2005年のAHAのガイドライン発刊以来、幾つかの研究は、両手のみのCPRは、院外において従来の(人工呼吸を伴った)CPRと同じくらい効果的であることを示しています。結論として、アメリカ心臓協会のボランティア科学者は勧告文書を公開しました。この勧告文書は、両手だけの(胸骨圧迫のみの)CPRです。「院外で突然心停止をおこした成人に対応するバイスタンダーへの行動の呼びかけ」は3月31日の雑誌Circulationで発表されました。この文書は院外で成人が突然倒れたのを発見したバイスタンダーに適用されます。この勧告の目的は、従来のCPRの訓練をされていないバイスタンダーと、従来のCPRの訓練は受けたけれども実際に実行する自信のないバイスタンダーが、両手のみのCPRをするのを勇気づけるためのものです。この勧告はまた最小の中断で胸骨圧迫をする従来のCPRを、自信をもってできるバイスタンダーは、従来のCPR,でも、両手だけのCPRでもいずれでもいいと書かれています。


Q22:アメリカ心臓協会はヘルスケアプロバイダーに対して、その勧告を変えたのですか?

A:いいえ。ヘルスケアプロバイダーに対する現在のAHAの勧告は変わっていません。現在のプロの救助者の手順がもっと効果的になるかどうか決めるのには、もっと研究が進む必要があります。


Q23:今回の勧告は2005年のCPRとECCに関するAHAのガイドラインとどのように違うのですか?

A:この科学的な勧告は、2005年のガイドラインでの両手だけのCPRが推奨されるケースが多くなるように、両手だけのCPR(胸骨圧迫のみのCPR)に関して修正されました。従来両手だけのCPRは人工呼吸ができない或はやりたくない市民に対して、また、通信指令係が電話でバイスタンダーにやってもらう場合に推奨されていました。しかし最近、バイスタンダーが行った両手だけのCPRは、従来のCPRと比べて同様に効果的であるとのエビデンスが発表されました。そのため、AHAは今回、院外での突然倒れた成人の傷病者を目撃したバイスタンダーが、両手のみのCPRをするよう推奨することにいたしました。


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Q24:以前のバイスタンダーに対するAHAの勧告は間違っていたのですか?

A:いいえ。2005年のAHAのCPRとECCに関するガイドラインの発刊で、AHAはCPRに関して最も重要な要素は、最小の中断での質の高い胸骨圧迫であることを強調しています。すべての心停止の傷病者にとっては従来の口対口の人工呼吸を伴うCPRを行うことが達成されるべきであり、これは事実です。AHAの専門家は口対口人工呼吸が比較的難しい手技であることを認識しています。もし救助者が人工呼吸と胸骨圧迫の組み合わせを練習していなければ、人工呼吸は手間取ってしまい、中断なく胸骨圧迫をするのは難しいと思います。加えて最近のエビデンスは、両手だけのCPRは、院外での突然の心停止においては、最初の数分間は、従来のCPRと同様に効果的であることを示唆しています。そのため、両手だけのCPRは現在、院外での成人の突然の心停止に対応するバイスタンダーに適切であると考えられています。CPRにおいて口対口人工呼吸の要素は依然としてほかの心臓血管の緊急事態での対応として重要です。たとえば以下のような場合です。
  ・すべての意識のない乳児と小児
  ・意識のない状態で発見され、正常な呼吸をしていない成人
  ・溺水や呼吸系のトラブルで倒れた傷病者


Q25:AHAにとって現在の2005ガイドラインを修正した転換点は何ですか?

A:2005年のAHAのCPRとECCのガイドラインでは、バイスタンダーCPRの普及と質の向上が必要だとしてきました。このガイドラインではまた、もし人工呼吸ができないか、或はやりたくない市民救助者は両手だけのCPRをするべきだとの勧告も含んでいます。(ガイドラインでは「胸骨圧迫のみのCPR」という用語が用いられています)2005年のガイドラインの発刊以来、幾つかの研究は、院外において両手だけのCPRは、従来の人工呼吸を伴うCPRと同様に有効であると示しています。この転換点は以下の2007年の3つの臨床研究です。
  ・Nagao et al.,2007
  ・Borm et al.,2007
  ・Iwami et al.,2007

結論として、アメリカ心臓協会のボランティア科学者は勧告文書を公開しました。この勧告文書は、両手だけの(胸骨圧迫のみの)CPRです。「院外での突然の心停止した成人に対応されるバイスタンダーへの行動の呼びかけ」は3月31日の雑誌Circulationで発表されました。


Q26:両手だけのCPRの勧告文書はアリゾナEMSの“最小の中断での胸骨圧迫蘇生(MICR)”について出版された研究に応じて出されたのですが? それとどう違いますか?

A:違います。MICRについての論文はEMSプロバイダーに使われるプロトコルを書いたものです。(バイスタンダーについてではありません)またそれは心停止の患者の蘇生のための薬物治療や除細動器の使用を含んでいます。 今回のAHAの勧告文書は、突然倒れ、突然の心停止かもしれない成人に、バイスタンダーが対応することのみを取り上げています。
[詳細について]今回、アメリカ心臓協会は一次救命の訓練を受けたヘルスケアプロバイダーとほかのプロの救助者に関する勧告を変えてはいません。これらのプロバイダーはこれからも自分のローカルなプロトコルに従っていくべきです。


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Q27:アメリカ心臓協会の科学的な文書を公開するプロセスはどのようなものですか?

A:アメリカ心臓協会において、ボランティアで専門家として働く研究者と臨床医は、心疾患とその治療に関係する科学的な文献を絶えずモニターし、評価しています。専門家が公開されたエビデンスを新しく支持したり、または従来からの変更が必要だと同意すれば、専門家のグループは論文審査のある雑誌に科学的な文書を投稿するように委託されます。
http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=3023366


     コース固有の情報


Q28:AHAは両手だけのCPRを教えるためのコースを作るのですか?

A:「両手だけのCPR」の特別なコースはありません。実習訓練のあるすべてのCPRトレーニングコースでは、最も重要なスキルである「両手だけのCPR」を教えます。それは質の高い胸骨圧迫です。加えて、全てのAHAのBLSコースを受講する受講生は、訓練のレベルに応じて「両手だけのCPR」についての小冊子を受け取ります。

AHAのファミリー&フレンズCPR Anytime www.cpranytime.org は自宅でくつろいでできる22分間のトレーニングです。インストラクターから教えられた、www.americanheart.org/cprのウェブサイトを見たり、また1-877-AHA-4CPRに電話すれば、CPRのコースについての情報を得ることができます。


Q29:以前CPR Anytimeのキットを購入した受講生が、キットが作られた後で追加された最新の情報を得たいと思っています。それをどこで手にいれることができますか?

A:「両手だけのCPR」のスキルは、現在のキットに含まれており、教育ビデオの胸骨圧迫の部分を見たり、練習したりできます。ビデオ全体の22分の訓練は、ユーザーが快適に実施できる胸骨圧迫である「両手だけのCPR」に特化したものではなく、乳児・小児や目撃されていない心停止や溺水や薬物中毒のような他の緊急事態を含む状況で必要な人工呼吸のスキルを含んでいます。 加えて、全てのCPR Anytimeキットは両手だけのCPRの小冊子を含んでいます。


Q30:この新しい情報で、AHAのトレーニングプログラムは何が更新されましたか?

A:全てのインストラクターによって導かれたBLSコースでは、追加されたレッスンマップにより、コースの中で両手だけのCPRを議論できます。インストラクターはまた受講生の方に「両手だけのCPR」のプリントをお配りします。これらのコースのリストに印刷物として追加され、両手だけのCPRの受講生プリントは各コースの追加教材になります。

自主学習のプログラムであるファミリー&フレンズCPR AnytimeとハートセイバーAED Anytimeは両手だけのCPRについての情報を含んでいます。もちろんBLSのeラーニングプログラムではインターネットを介して、両手だけのCPRの情報がダイレクトに受講生に対して更新されます。


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     追加の情報


Q31:どこでもっと詳しい情報を得ることができますか?

A:アメリカ心臓協会は両手だけのCPRに関して、一般の方へのウェブサイトを立ち上げています。
詳しくはwww.americanheart.org/handsonlycprまで


Q32:メディアからの質問にどのように対応すればいいですか?

A:AHAはメディアとの関係を4月1日から始める努力をするよう案内しています。 もしローカルニュースのメディアから質問された場合、地域のAHAの支部の広報責任者まで直接連絡するよう言って下さい。全国メディアからのコンタクトはKate Lino,  kate.lino@heart.org  or  214-706-1325 までお願いします。


Q33:[公共の場所][職場][自宅][個人のボート]などで使うために、AEDを購入しようと思っています。音声でCPRのコーチングをしてくれる機種を考えています。両手だけのCPRか従来のCPRか、プログラム設定はどうなっているのでしょうか?

A:AEDにあらかじめプログラムされているデフォルトのコーチングに従って下さい。アメリカの市場において、FDA(食品医薬品局)によって認可された全ての機種は、2005年のAHAのCPRとECCのガイドラインに従ったコーチングがなされます。もしそのAEDが人工呼吸をするようにコーチングした場合でも、あなたが最小の中断で質の高い胸骨圧迫をする自信がない場合、AEDがCPRをするように促した時に、両手だけのCPRをして下さい。






本ページに関するお問合せは右記まで。kuga@jemta.org


update 2008.04.16                 
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